地雷である「仕組み債」は販売規制すべき。投資家も踏まないように気をつけよう
金融庁と証券取引等監視委員会は苦情が相次ぐ「仕組み債」について、メガバンクや地域銀行、証券会社などの販売実態を総点検するとのこと。
金融庁と証券取引等監視委員会は苦情が相次ぐ「仕組み債」について、メガバンクや地域銀行、証券会社などの販売実態を総点検する。安全なイメージの強い債券にもかかわらず、デリバティブ(金融派生商品)を組み込んだハイリスク商品で、数千万円単位で含み損が発生する個人投資家もでている。監視委は地銀子会社を中心に重点的に立ち入り検査へ入り、金融庁も金融商品取引法上、問題があれば銀行検査に入る方針だ。金融庁は月
「遺産相続や退職金を受け取ったばかりの高齢者からの苦情が目立つ」
「早期償還により繰り返し購入を案内され、9000万円が評価額でほぼゼロになった」
「地銀子会社の中には、営業収益の8割を仕組み債販売手数料で稼ぐケースもある」
地獄みたいな事例が紹介されており、軽くめまいがします。
金融庁が2022年6月30日に発表した「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について(令和3事務年度)」に仕組み債について言及されているので、原典にあたりたいと思います。
■ 仕組債
・現状 : 販売額は、ここ数年、EB債(個別株価連動型の仕組債)を中心に相応の規模
・課題 : 中長期的な資産形成を目指す一般的な顧客ニーズに即した商品として、ふさわしいものとは考えにくい。
① 商品性に関する問題点
・一般的な債券と異なり、当初予定の満期時に元本で償還される可能性が必ずしも高くないこと。
・十分な金融知識がないと、リスクやコスト見合いのリターンの理解が困難なこと。
② 販売体制に関する問題点
・顧客が負担するコスト開示や他の運用商品との比較説明といった観点で、商品説明が不十分であること。
・顧客の最善の利益に資する真のニーズに応じた販売が行われていない可能性が高いこと。
(投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について(令和3事務年度)より)
金融庁の調査結果を見ると、仕組み債の商品性、販売体制ともに抑えめの言葉ながらボロクソの評価です。
中長期的な資産形成を目指す一般的な顧客ニーズに即した商品として、ふさわしいものとは考えにくいと監督省庁がダメ出しをしている商品。一般的な債券と異なり、当初予定の満期時に元本で償還される可能性が必ずしも高くないと監督省庁がダメ出しをしている商品。十分な金融知識がないと、リスクやコスト見合いのリターンの理解が困難だと監督省庁がダメ出しをしている商品。
それが仕組み債です。そんなものが年間4兆円も販売されているのです。
仕組み債が問題になるのはなにも目新しい話ではなく、10年以上前からたびたび問題になっていました。EB債だったりノックイン債だったり、ノックイン型投信だったり、名前はすこしずつ異なりますが、もとは仕組み債であることは同じです。
<ご参考> ※記事の日付に注目
2011/05/14 ノックイン型投信なんてまだ売っていたのか - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
仕組み債は、よくわかっていない個人投資家から金融機関が手数料をむしり取るために存在する商品といっても過言ではない。なぜならば、仕組み債の損得がわかる個人投資家なら、誰も買わないからです。見た目の金利は高く設定されていますが、付いている条項や特約の条件は、投資家ではなく金融機関が有利に設定されています。
金融庁は販売実態の総点検なんかやっていないで、今すぐ仕組み債の販売を規制したらよいのにと個人的には思います。
あるいは、ぱっと見で低リスクな債券のように見える名称がきわめて不適切なので、「仕組み爆弾」「仕組み地雷」とでも名称変更してはいかがでしょうか。窓口や電話で「こちらの仕組み爆弾はいかがでしょうか?」と勧められて「購入します」という人はさすがにいないでしょうから。
一方で、いくら金融機関が仕組み債を販売したくても、勝手に投資家の口座に押し込むことはできません。曲がりなりにも、投資家が購入を承認するサインをしたり、承認ボタンを押したりしてはじめて、金融機関は投資家に仕組み債を販売できます。
いくら見た目の金利が高くても、「自分が理解できないものには投資しない」という投資の大原則を投資家が守ってさえいれば、想定外の損失を被ることもなかったはずです。
この記事では仕組み債をどうしようもない悪徳商品のように扱っていますが、どうしようもない悪徳金融機関と悪徳営業マンだけが販売している特別な商品ではありません。
言いたかないですが、インデックス投資家御用達のSBI証券やマネックス証券でも、仕組み債は今現在も堂々と販売されています(楽天証券は現在販売されてないようですが過去には販売実績あり)。これらの地雷は、投資家が踏まないように避けるしかないのが現状です。
取ったリスクが応分のリターン向上に資するフェアな金融商品は他にいくらでもあります。
仕組み債を売る方も買う方もしっかりしましょう。
トウシルに『やってはいけない!「債券投資=安定運用」の誤解』という記事が掲載されています。やってはいけない!「債券投資=安定運用」の誤解 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア 資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動をわかりやすく解説します。 今井さんは...
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