「思考停止」から抜け出したい!(その4) MBAバリュエーション

水瀬ケンイチ

前回の記事、「思考停止」から抜け出したい!(その1)(その2)(その3)の続きです。

企業価値評価のことを、「バリュエーション」というらしいです。
バリュエーションのいい本ないなか~と探していたら、その名もズバリなのがありました。


この本は、僕のような素人でも分かりやすいと思います。
なんと言っても、ハードカバーの割には文字がデカい!(笑)

基礎編と実務応用編に分かれていて、特に基礎編の、企業価値算定に必要な「三種の神器」(現在価値・ディスカウントレート・永久還元の定義式)についての説明を、まずは何度も読み返しました。

そして、企業価値算定の基本公式、

企業価値(PV)=C/(r-g)

です。Cは事業の収益力(現在のキャッシュフロー)、rはキャッシュフローの安定性、gはキャッシュフローの成長性を表し、企業価値や株価が、すべてこの3つの要因で決まるとの考えです。

当初、(r-g)って何?期待収益率?何ソレ?と思いましたが、(r-g)の逆数である1/(r-g)が、投資家におなじみの株価収益率(PER)だと教えてくれます。
ということは、(r-g)というのは、むか~し覚えた「益回り」のことじゃないですか。へぇ~。
なんて具合に、断片的だった知識と、どんどん結びついていきます。

余談ですが、上記の基本公式を知ってからから、楽天証券の山崎元氏コラム「ホンネの投資教室」の「第五十三回 株価の適正水準に関する雑考」を読むと、むちゃくちゃ理解できます。

また、言葉的にややこしかった、「時価総額」と「企業総価値」(=将来キャッシュフローの現在価値)の違いについては、「ネット・デット」の有無だと分かりました。(図がとても分かりやすいので、一部手を加えて載せておきます)
図解

どうも、企業価値の算定においては、簡単に数字がつかめる「時価総額」よりも、ネット・デットを加えた「企業総価値」のほうが有用のようです。
でも、企業の決算書には、ネット・デットという項目はないので、自分で計算するようです。
簡単な算出方法としては、「有利子負債」-「現金および現金同等物」とのこと。
ん?両方どっかで見たことある言葉だな?と思ったら、四季報なんかに出ている項目でした。これで、何のために使うのか分からなかった四季報の数字の2つが、意味を持ち始めました(^^)

今まで、ぼんやりとしか理解できていなかった基本的事項が、有機的に結びついてきて、シャキっと見えてきたような気がします。



実務応用編では、会社の値決めの具体的方法が書かれていました。

  • 類似上場会社比準方式

  • 類似した会社を選び出し、それらのPER、EBIT、EBITDA倍率を対象会社の実績数字や見通し数字に掛けて、評価額を算出する。

  • 類似取引比準方式

  • 過去に行なわれたM&A事例において、類似の被買収会社にたいしていくらの価格が支払われたかを元に、類似上場会社比準方式と同様の各種倍率を計算し、実績数字や見通し数字に掛けて、評価額を算出する。

  • ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)方式

  • 将来5~10年の収支予想、キャッシュフロー予想を行ない、それを買収対象会社の事業リスクを勘案したディスカウントレートで現在価値に引きなおす方式。

ちょっと目をひかれたのは、数字を駆使した科学的な手法かと思いきや、「類似」「過去の事例」「将来予想」と、意外に不確定な要素によって、値決めが行なわれているんだなあというところです。
それぞれ弱点をもっているので、実務では、合わせ技の算定モデルで評価するようです。

この本を通じて、いちばん勉強になったところは、企業価値がPV=C/(r-g)で算出できるということは、欧米ビジネスマンとの「共通言語」に過ぎないということを、教えてくれたことです。

企業のディスカウントレートrや成長率gなど、数字に直しても正確ではないと分かっていても、とりあえずもっともらしい数字を置いてみて議論を進める。そして、みんながこの方法で企業価値評価をしている。

なんだか、思っていたよりも適当だなぁと思ってしまいました。
でも、様々な価値観が交錯する実世界において、ビジネス上の理由から「必要に迫られた」人たちが実務を進めるうえでは、ある種の割り切りは必要なことだと思います。
PV=C/(r-g)は、まさに、「グローバルスタンダード割り切り」と言ってもいいのではないでしょうか。
(前回記事のコメントでも、読者の皆さまより、同様の「あくまでツールに過ぎない」とのご意見を多数いただきました。ありがとうございます)

ただ、少々適当な部分があったとしても、その「共通言語」すら知らない者が、それを語る資格はありません。
しっかり学んで、その共通言語の限界を知ったうえで、使える部分をフルに使っていけばいいのではないかと思います。

(次回に続く)
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Posted by水瀬ケンイチ